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学校の先生が喪失を経験した子どもと関わる時

 災害を経験した子どもたちに最も大切なことは、早く安全な日常生活を取り戻すことです。日常的な学校生活の環境を整えることは、子どもたちが心の安全感を取り戻すことにつながっています。また、学校での先生方のご配慮は、子どもたちや保護者の方への心の回復に、大きな助けになります。その子どもが親やきょうだいをなくしている場合や、親と離れた生活を余儀なくされている場合は、特に心配りが必要となります。

災害で喪失を経験した子どもの心や行動の変化

 災害後の子どもの反応は、年齢によっても、個人によってもさまざまです。わずかな物音で驚く、夜泣きをする、わがままや甘えが出る、落ち着きがない、集中力が低下する、学業不振が続く、集団になじめない、喘息やアレルギーなどの身体症状が出る、などが例として挙げられます。気質からくるものと決めつけず、そのサインをしっかり受け止めて下さい。叱ったり、説得することの多くは、逆効果になります。

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 親やきょうだいをなくした場合、悲しみの表現方法は、通常、大人とは異なります。泣きじゃくることもありますが、逆にはしゃいだり、いたずらを繰り返したり、何もなかったかのように振る舞う子どももいます。また、しばしば子どもは、自分が悪い子どもだったから、あるいは自分のせいで、大切な家族が死んでしまったと考えます。悲しみの表現がどういう形であれ、それを認め、子どもの存在を常に尊重して下さい。また、言葉に表せない思いがあることを理解し、いつも穏やかに、子どもが安心感を持てるように接して下さい。

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 悲しむことは、通常、人々が予想しているよりもずっと長く続きます。生活が落ち着き、新しい学校に慣れ、元気そうに見えても、子どもは災害のことや生まれ育った町のこと、なくなった人のこと、大切な友達や先生のこと、家族が大変な状況であることなどを、決して忘れることはありません。心の悲しみがなくなることはないのです。
 ほかの友達と自分がどこか違うように感じる、ちょっとした揺れや暗闇を恐がる、救急車や消防車のサイレンの音を聞いて不安定になるなどのことは、何年も経過したあとでも起こります。被災した子どもには、長期的に心のケアへの配慮が必要です。

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子どもの支援を行う際の留意点

 子どもは元気に見えても、自分の気持ちを、親や周囲の人に話せずにいる場合があります。心の中には、不安や恐れのほか、自分を責める気持ちが強い場合もあります。できるだけ先生の方から子どもに話しかけるようにして下さい。必要に応じて、「心配なことがあったら、いつでも言ってね。」「自分に責任はないんだよ。」「しんどいことを、話してもいいよ。」「~ができなくても、ちっとも恥ずかしくないよ。」と、繰り返し伝えて下さい。

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 その子どもの話や感情に、関心を持って下さい。また、子どもが話せるように、時間をおいて待って下さい。子ども自身が自分の気持ちを表現することには、とても意味があります。ただし、子どもが話を避けている時は、無理に聞こうとしないで下さい。

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 子どもに心身の不調や問題行動が見られた場合、「今回のようにとても大変なことが起こったら、誰にでもそうなることがあるよ。」と、わかりやすい言葉で説明して下さい。

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 心の傷に触れるのではないかと思って、地震や亡くなった人の話を過度に避ける必要はありません。むしろ、自然な会話の中でその話が出てくるほうが、子どもは安心して話すことができます。子どもの話に耳を傾け、子どもからの質問には、いつも丁寧に答えるようにして下さい。答えられない質問には「先生にもわからないんだよ」と率直に話して下さい。大人がいつも誠実に対応することで、子どもはその出来事の意味を少しずつ理解していきます。

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 地震や家族を思い出して、あるいは何もないのに急に、子どもが泣き出すことがあるかもしれません。背中をさすったり、肩を抱くなどして、決して一人ではないことを子どもが感じとれるようにして下さい。先生のそのような態度が、ほかの子どもたちの思いやりを育むことにもつながります。

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 災害を経験した子どもが、物や人に対して攻撃的になることは、よくあることです。また、「地震ごっこ」「津波ごっこ」など、大人にとっては不謹慎とも思えるような過激な遊びをすることもあります。これも、言葉で伝えられない気持ちの表れと言えますが、一方で発散させることも必要です。しかし、衝動的に自分や他者に危険な行動に出た場合は、即座に止めて下さい。最低限のルールと安全な方法を伝え、その枠内を守るように子どもに話して下さい。先生方の見守りも必要です。

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 もし勤務されている学校に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配属されている場合は、連携をとることも重要です。


子どもの回復力を信じる

 たとえどんなに大きな外傷体験(トラウマ)であったとしても、子どもは周囲からの十分なサポートがあれば、大人以上に回復力があると言われています。子どもには決して嘘をつかないで下さい。また、守りきれない約束をしないで下さい。周囲の大人が協力して子どもを支援していく中で、現実を子どもが少しずつ受け入れていく過程を見守って下さい。

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 今回のような大きな災害が起こった場合、その出来事を忘れ去るように促したり、打ち勝とうとか、あるいは克服させようと思わないで下さい。また、早く何とかしてあげようと焦らないで下さい。大切なことは、たとえ自分でコントロールできないほどの出来事が起こったとしても、人は希望を持って生きることができるのだということを、子ども自身が自分のペースで少しずつ学んでいくことです。


【参考書籍】
ダギーセンター (米) [編] (2005) :『大切な人を亡くした子どもを支える35の方法』梨の木舎
リンダ・エスピー [著]、下稲葉かおり [訳]:『私たちの先生は子どもたち!- 子どもの悲嘆をサポートする本』青海社



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