「話を聞いてもらおうと思ったら、相手の人に困った顔をされてしまって…」と言われるご遺族の方は少なくありません。
なんと声をかけていいのか、どういう風に話を聞けばいいのかと不安になり、話をそらしたり、安易に「頑張って」と励ましたりすると、それがご遺族の心を余計に傷つけることもあるので、注意が必要です。
支援者の心構えとして、支援にあたる前には、以下のようなことに配慮する必要があります。
1)自分が先回りして、相手が困っていることを考えるのではなく、相手が何を望んでおり、そのために何かお手伝いできることはあるのか、といった相手のニーズに合わせて支援を開始することが重要です。
2)話をする時は相手の目を見て、普段よりもゆっくりと話しましょう。「~してあげる」「かわいそうに」といった態度や話し方をしないようにしましょう。
3)相手が話をできない時は、無理に聞き出そうとせず、「大変でしたね。」とねぎらいの言葉を一言かけるだけでも構いません。相手の悲しみや苦痛を理解しようとする心が大切です。
4)遺族の方が自分から被災体験や亡くなった人について話し始めた時には、共感と関心を持って誠実に傾聴します。話の途中で、支援する人のほうから話題を変えないようにして下さい。
5)遺族が知りたいと望んでいることに対しては、正確な情報を提供しましょう。わからないことはわからないと話し、相手から求められていない時は、支援する人の経験や信念、宗教的な考えを一方的に話すことは控えましょう。
励まそうと思ったり、慰めたりするつもりでいった言葉や言動が、深い悲嘆(グリーフ)の中にいるご遺族をさらに傷つけてしまうことがあります。このことを「二次被害」といいます。二次被害を最小限にするために、支援する人は、次のような言動にはくれぐれも注意して下さい。
〇そのうち楽になりますよ。時間が解決してくれますよ。
・その場の気やすめに聞こえます
〇泣いてばかりいないで…。
・ 感情を表出することを禁じているように聞こえます
〇泣いたほうがいいですよ。
・悲しくても泣くことができない場合があります
〇あなたはまだいいほうですよ。
・ 他人との比較は慰めになりません
〇あなたがしっかりしないと…。
・ 心のよりどころを失っている時には、その言葉はつらく聞こえます
〇そんなに悲しんでいたら、亡くなった人が心配しますよ。
・ 悲しむことが悪いように聞こえます
〇思ったより元気そうですね。
・ 心の悲しみを理解してもらえていないと感じます
〇早く乗り越えてね。
・ 気持ちを理解してもらえていないと感じます
〇私だったらとても耐えられないわ。
・他人事のように聞こえます
その他、自分の「価値観の押しつけ」や、期待を裏切るような「できないことの約束」は、しないでおきましょう。
※日本DMORT編「家族(遺族)支援マニュアル(東日本大震災編)」参照。http://dmort.jp/
1.悲嘆の支援
死別直後は、ご遺族は非常に強い悲嘆反応を示し、とても心配に見えるかもしれません。しかし、悲嘆反応の大部分は、時間の経過とともに減弱していきます。支援を始める前に、このウェブサイトの「悲嘆(グリーフ)とは」のコーナーをご一読下さい。あらかじめ、死別後の悲嘆反応について、支援者が理解を深めておくことは、それを知らずに支援を始めるよりも、ずっと支援を容易にします。
悲嘆(グリーフ)の支援には、悲しみの感じ方やその後のプロセスが人それぞれであるように、決まったやり方というものはありません。また、愛する人を亡くした悲しみは、強さや形を変えながらずっと続くものであり、それを完全に消し去ることが目標ではありません。悲しみを持ちながらも、かけがえのない人との記憶とともに、新しい生活を歩むことを支援します。
ご遺族のニーズや、その人なりの回復のペースや対処方法に合わせながら、必要とされる支援を提供し、負担のない形でそっとそばで見守りましょう。支援者がご遺族にとって安心できる人であることが、とても大切なことです。
2.支援を始める前に
一般に、「死」や「死別」は忌むべきものとして捉えられ、人々は「死別神話」と呼ばれる死に対する誤った考え方や信念を持ちやすいと言われています。以下のことは、死別神話の代表的なものです。支援を始める前に、少し心にとめておきましょう。
☒時間が経てば悲しみは癒される
(真実)時間は大きな助けになりますが、愛する人を失った悲しみは一生消えるものではありません。
☒喪失について考えないようにするほど、苦しみは少ない
(真実)悲しみ、嘆き、なくなった人を思うことは全く正常な反応であり、苦しい期間を経て、人は悲しみから回復していきます。
☒死別に触れないほうが、ご遺族の助けになる
(真実)過度に踏み込むことは避けるべきですが、悲しみを表現したり、話したりする場があることは、通常、大きな助けになることが多いものです。
☒泣いたり、自分の思いを多く話す人は、感情を表出しない人よりも苦しんでいる
(真実)表出された悲嘆が、心の内面の悲しみを反映しているとは限りません。特に男性や子どもの場合、表出される悲嘆と実際の悲嘆は、しばしば異なることがあります。
☒子どもは大人ほど死別の悲しみは深くないし、たとえ悲しんだとしても短い期間で乗り越える
(真実)すべての子どもは嘆き悲しみますが、それを大人と違った形でしか表現できません。子どもは大人に比べ、死を理解しにくかったり、感情を表現する力が未熟であるため、しばしば大人以上に傷つき、正しい情報を得られないなどの不利益を被ることがあります。
3.支援を行う際のポイント
ご遺族の支援へのニーズは人それぞれですが、実際に行うにあたっては、以下のようなことを押さえておきましょう。
1)死別直後の苦痛に対して「こんな思いをしているのは自分だけだろうか」「こんなに立ち直れないのはおかしいのだろうか」と思うご遺族は多いものです。死別後にコントロールできないほどのさまざまな感情が生じたり、体の不調が続くことは、全く自然な反応であり、涙が流れる時にはそれで構わない、ということを、支援者自身がまず知っておきましょう。
2)ご遺族の悲しみの症状や置かれている状況、死別による影響、その対処の方法は非常に個人差があります。典型的な悲嘆反応を支援者が理解しておくことは大切ですが、それに当てはめてその人の思いや悲嘆反応を解釈したり、対処方法を安易にアドバイスしたりすることは、かえって害になることも多いので注意しましょう。ご遺族自身がどのように死別を受けとめているか、喪失の意味をどのように見出そうとしているかを尊重することが大切です。
3)朝に起き、着替え、三度の食事をとること、あるいは住む家や仕事の環境が整うことなど、日常生活が普通に送れるように支援することは、非常に重要です。また、供養の儀式やお墓をどうするか、親のいない間に子どもを誰に預けるか、といった現実的な問題を話し合うことも、とても大切な支援です。もし生活上で支援できそうなことがあれば、最初にその人に何をしてほしいかを尋ねると良いでしょう。たとえその支援が物質的な支援であったとしても、それは心のケアにつながっています。
4)大切な人を亡くしたあとは、ご遺族は心のよりどころを失っています。そのような時に「頑張って」という言葉が負担になることがある、ということを覚えておきましょう。また、ご遺族の中には、通院やお薬が必要な方もいます。「本人の精神力で乗り越える」という考えは、不適切であることも多いので注意しましょう。
5)もしご遺族と良好な信頼関係を築けていれば、支援者から次のような情報提供を行うことが良いこともあります。
※Burnell GM, Burnell AL [著]、長谷川浩・川野雅資 [訳] (1994) :『死別の悲しみの臨床』医学書院
瀬藤乃理子・村上典子 (2011) :『外傷的な死別後の遺族のケア – 喪失とトラウマの理解』
(飛鳥井望 [編集] :『最新医学別冊 心的外傷後ストレス障害(PTSD)』最新医学社)
などを参照
災害時やその後の支援活動には、さまざまなストレスが加わります。支援活動の中で遺体や悲惨な光景を目撃すること、被災者の悲しみなどの感情に触れること、支援として対応すべきことに十分に応えられず罪責感を感じることなどは、その代表的なものです。
特に、ご遺族の話を聞くことは、熟練した経験豊かな支援者でも、非常にストレスが高く、無力感や挫折感を伴いやすいと言われています。死別やトラウマに関わる話に共感的に応答し、その思いを理解しようとする努力自体が、支援者を疲弊させることが知られており、それは近年、「共感性疲労」や「代理受傷」という言葉で呼ばれています(1995 Figley, 1999 Herman)。
この共感性疲労は、対人援助が受ける二次的なストレスで、バーンアウト(燃え尽き)の一つの形です。
燃えつきを予防する対策としては、心に傷を持つ人たちの支援は、強い疲労感や無力感を引き起こすことをあらかじめ覚えておき、自分自身でセルフケアを実践するように心がけることです。
過労にならないよう十分な休息をとり、睡眠・食事・人間関係などの私生活を充実させましょう。また、仕事においても、誰にでも限界があることを認識し、一人で抱え込まないようにしましょう。支援チームを組み、同僚のサポートや上司の指導を受けながら行うことも良いでしょう。
支援を実際に行う際は、ご遺族との距離感を意識しましょう。距離が遠すぎると支援として成立しませんが、近すぎることも、ご遺族・支援する人の双方にとって、あまり良いことではありません。支援する人が相手との距離を保つことが難しい時は、必ず周囲の人に相談しましょう。適切な距離を維持することが、支援を長続きさせるためにも役立ちます。
まずは自分の心身の安全を確保し、支援者が健康であることが、支援を行う上で最も重要なことです。
※Figley CR (1995) :Compassion Fatigue;Coping with secondary traumatic stress disorder in those who treat the traumatized. Brrunner-Routledge.
Herman JL [著]、中井久夫 [訳] (1999) :『心的外傷と回復』みすず書房
家族や親族、友人などによるサポートは、最も大切な支援の一つです。なぜなら、その人たちは、故人のことをよく知り、遺された人たちが故人のことをどんなに大切に思っているかを知る人だからです。
遺された人たちに何と言葉をかけたら良いのかわからないかもしれません。また悲しい顔を見ると自分も悲しくなるので、できるだけ触れたくないと思うこともあるでしょう。
しかし、多くの場合、何も言わなかったり、その話題を避けるよりは、「自分も悲しく、とても残念に思っている」ということを、その人に伝えるほうが良いのです。悲しみを取り去ることはできませんが、その人たちが話したいと思う時に耳を傾けたり、実際に困っていることに対し援助することによって、あなたはその人を支えることができます。
【援助のためのいくつかの方法】
1.喪失をなかったことにしないこと
2.聴くこと
3.細く長く連絡をとり続ける
4.日常生活の支援
5.ほかに助けになること
災害直後、被災地には、外部からたくさんの支援者がやってきます。それは、被災地の人々、特に現地の支援者にとって、とてもありがたいことである反面、外部からくる人たちをコーディネートしたり、初めて来る方にもわかるように準備を行う、といった新たな仕事も増えます。
近年、外部から支援に入る人たちには、「受援力」が必要といわれています。この「受援力」という言葉は、「相手が受け取りやすい支援を提供できる力」という意味です。災害時には、被災地の事情や文化、人々の状況などを十分に理解して、地元の人たちに負担をかけない、地元の人たちのニーズに合わせた支援を行うことが、とても重要になります。
以下は、外部から被災地に入る支援者の方に、気をつけてほしい事柄です。
1.自分が短期間しか援助できないことを認識しましょう。被災地では、現地の支援者しかできない支援があります。それを助けるつもりで活動しましょう。現地の支援者に対し、いつもねぎらいの言葉を忘れないようにしましょう。
2.支援を始めるときは、被災地の人々が何を望んでいるのか、何を必要としているのかに焦点をあて、今できる支援から考えていきましょう。
3.やったほうが良いことと、やれることは違います。その地域のマンパワーを考慮することも、とても大切です。
4.情報は丁寧に扱いましょう。他の支援者と共有した方が良い情報と、プライバシーを保護すべき情報を、きちんと分けて扱いましょう。
5.外部からの支援者の方も、過労や燃え尽きに十分に注意して下さい。被災地での活動は、支援したいという気持ちや精神的緊張から、過剰に活動してしまいやすい環境にあります。また、心に傷をもつ人たちのサポートは、強い疲労感や無力感を引き起こすことを覚えておき、休息をとりながら活動するように、十分に注意して下さい。
このページは、学校の先生方が被災した児童にかかわる際に留意して頂きたい点を掲載しています。
災害を経験した子どもたちに最も大切なことは、早く安全な日常生活を取り戻すことです。日常的な学校生活の環境を整えることは、子どもたちが心の安全感を取り戻すことにつながっています。
とくに学校での先生方のご配慮は、子どもたちや保護者の方への心の回復に、大きな助けになります。その子どもが親やきょうだいをなくしている場合や、親と離れた生活を余儀なくされている場合は、特に心配りをお願いします。
1)災害で喪失を経験した子どもの心や行動の変化
〇災害後の子どもの反応は、年齢によっても、個人によってもさまざまです。わずかな物音で驚く、夜泣きをする、わがままや甘えが出る、落ち着きがない、集中力が低下する、学業不振が続く、集団になじめない、喘息やアレルギーなどの身体症状が出る、などが例として挙げられます。気質からくるものと決めつけず、そのサインをしっかり受け止めて下さい。叱ったり、説得することの多くは、逆効果になります。
〇親やきょうだいをなくした場合、悲しみの表現方法は、通常、大人とは異なります。泣きじゃくることもありますが、逆にはしゃいだり、いたずらを繰り返したり、何もなかったかのように振る舞う子どももいます。また、しばしば子どもは、自分が悪い子どもだったから、あるいは自分のせいで、大切な家族が死んでしまったと考えます。悲しみの表現がどういう形であれ、それを認め、子どもの存在を常に尊重して下さい。また、言葉に表せない思いがあることを理解し、いつも穏やかに、子どもが安心感を持てるように接して下さい。
〇悲しむことは、通常、人々が予想しているよりもずっと長く続きます。生活が落ち着き、新しい学校に慣れ、元気そうに見えても、子どもは災害のことや生まれ育った町のこと、なくなった人のこと、大切な友達や先生のこと、家族が大変な状況であることなどを、決して忘れることはありません。心の悲しみがなくなることはないのです。
〇ほかの友達と自分がどこか違うように感じる、ちょっとした揺れや暗闇を恐がる、救急車や消防車のサイレンの音を聞いて不安定になるなどのことは、何年も経過したあとでも起こります。被災した子どもには、長期的に心のケアへの配慮が必要です。
2)子どもの支援を行う際の留意点
〇子どもは元気に見えても、自分の気持ちを、親や周囲の人に話せずにいる場合があります。心の中には、不安や恐れのほか、自分を責める気持ちが強い場合もあります。できるだけ先生の方から子どもに話しかけるようにして下さい。必要に応じて、「心配なことがあったら、いつでも言ってね。」「自分に責任はないんだよ。」「しんどいことを、話してもいいよ。」「~ができなくても、ちっとも恥ずかしくないよ。」と、繰り返し伝えて下さい。
〇その子どもの話や感情に、関心を持って下さい。また、大人ばかりが話さず、子どもが話せるように待って下さい。子ども自身が自分の気持ちを表現することには、とても意味があります。また、子どもが話を避けている時は、無理に聞こうとしないで下さい。
〇子どもに心身の不調や問題行動が見られた場合、「今回のようにとても大変なことが起こったら、誰にでもそうなることがあるよ。」と、わかりやすい言葉で説明して下さい。
〇心の傷に触れるのではないかと思って、地震や亡くなった人の話を過度に避ける必要はありません。むしろ、自然な会話の中でその話が出てくるほうが、子どもは安心して話すことができます。子どもの話に耳を傾け、子どもからの質問には、いつも丁寧に答えるようにして下さい。答えられない質問には「先生にもわからないんだよ」と率直に話して下さい。大人がいつも誠実に対応することで、子どもはその出来事の意味を少しずつ理解していきます。
〇地震や家族を思い出して、あるいは何もないのに急に、子どもが泣き出すことがあるかもしれません。背中をさすったり、肩を抱くなどして、決して一人ではないことを子どもが感じとれるようにして下さい。先生のそのような態度が、ほかの子どもたちの思いやりを育むことにもつながります。
〇災害を経験した子どもが、物や人に対して攻撃的になることは、よくあることです。また、「地震ごっこ」「津波ごっこ」など、大人にとっては不謹慎とも思えるような過激な遊びをすることもあります。これも、言葉で伝えられない気持ちの表れと言えますが、一方で発散させることも必要です。
しかし、衝動的に自分や他者に危険な行動に出た場合は、すぐに止めて下さい。最低限のルールと安全な方法を伝え、その枠内を守るように子どもに話して下さい。先生方の見守りも必要です。
〇もし勤務されている学校に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配属されている場合は、連携をとることも重要です。
3)子どもの回復力を信じる
〇たとえ大きな外傷体験(トラウマ)であったとしても、子どもは周囲からの十分なサポートがあれば、大人以上に回復力があると言われています。
どんなことでも、子どもには決して嘘をつかないで下さい。また、守りきれない約束をしないで下さい。周囲の大人が協力して子どもを支援していく中で、現実を子どもが少しずつ受け入れていく過程を見守って下さい。
〇今回のような大きな災害が起こった場合、その出来事を忘れ去るように促したり、打ち勝とうとか、あるいは克服させようと思わないで下さい。また、早く何とかしてあげようと焦らないで下さい。
大切なことは、たとえ自分でコントロールできないほどの出来事が起こったとしても、人は希望を持って生きることができるのだということを、子ども自身が自分のペースで少しずつ学んでいくことです。
【参考書籍】
ダギーセンター (米) [編] (2005) :『大切な人を亡くした子どもを支える35の方法』梨の木舎
リンダ・エスピー [著]、下稲葉かおり [訳]:『私たちの先生は子どもたち!- 子どもの悲嘆をサポートする本』青海社
このページは、学校の先生方が被災した児童の保護者を支援する際に留意して頂きたい点を掲載しています。
災害後の保護者への支援は、子どもの心の支援につながっています。先生方が保護者を支援する場合、次のようなことを知っておいて下さい。
〇被災した児童の保護者の状況も把握して下さい。保護者の状況が、子どもの心身の安全面に大きく影響を与えます。保護者の疲れや悲しみが強い場合、感情の起伏が激しい場合、生活の再建のために子どもへの関わりが十分に行えない場合、災害により生活が困窮している場合などは、保護者自身が今の家庭の状況や、子どもとの関係性を変えるのが難しいかもしれません。その分、学校での子どものサポートがとても重要となります。学校では、できるだけ普通の生活を送ることができるように、配慮して下さい。
〇保護者とは、最初だけでなく、時々でも継続的に連絡をとって下さい。被災後、家庭の状況が次々と変わり、子どもに影響が出ることがあります。先生方が状況の変化を把握しておくことは、子どもを支えるうえで重要になってきます。
〇保護者も被災したことで、大きな心の傷をおっている可能性があります。保護者と話をする際は、相手の雰囲気や声のトーンに、先生方も合わせて下さい。落ち着いた口調で、聴く姿勢を保ち、相手の緊張感を和らげるように配慮して下さい。保護者と話す中で、大変な家庭の状況を聞くこともあるかもしれません。その時は、ただそばにいて話を聞くことが、大きな助けになります。
〇子どものことを過度に心配している保護者には、適切な情報や支援機関、専門家や専門機関(小児科医、子どもに詳しい精神科医や心療内科医、児童相談所、保健所、精神保健福祉センターなど)の情報を伝え、そこにアクセスするように勧めて下さい。
〇親やきょうだいをなくしている場合や、子どもが親と離れている場合、子どもの生活はそれまでと一変しています。現在の養育者と十分に連携をとり、子どもの安定した世話と生活習慣が、保障されるように話し合って下さい。
〇中には、医療機関を受診したほうが良いと思われる子どもや保護者がいるかもしれません。まだ医療機関にかかっていない場合には、先生方からも受診を勧めて下さい。経済的な面に問題がある家庭では、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)、児童相談所、福祉事務所などに相談することも良いでしょう。
〇先生方自身が、保護者や子どもへの接し方に悩むことがあるかもしれません。支援が負担に感じられる場合は、先生方自身も上司や同僚、信頼できる専門家(かかりつけ医やSC、SSWなど)に相談して下さい。特に被災地の先生方は、自らも被災されたり、大切な教え子を亡くされたりするという厳しい現実の中で、非常に重い負担がかかりやすくなります。一人で抱えこまないことや無理をしないことが大切です。
災害早期に支援者が行う心理的支援方法の一つとして、サイコロジカル・ファーストエイド Psychological First Aid(=PFA)があります。近年、この災害早期の支援(PFA)は、大規模災害による緊急事態時に行う支援方法として、各種の国際的ガイドラインで推奨されています。
2009年、アメリカPTSDセンターが作成した「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き 第2版」が、兵庫県こころのケアセンターのウェブサイトよりダウンロードできるようになりました。災害早期の支援は、被災者を支援する際の支援者の基本的な姿勢を具体的に明示しており、災害早期の被災者支援に非常に役立つものです。
下記のURLから、その手引きをご覧頂けます。
〇兵庫県こころのケアセンターウェブサイト PFAのページ
「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き 第2版」日本語版 | 兵庫県こころのケアセンター (j-hits.org)
死別を経験したご遺族のニーズはさまざまですが、多くのご遺族が、次のようなことを望んでいます。
(これ以外にもいろいろなニーズがあります)
どのような立場であろうとも、支援する立場で関わる場合は、災害で大切な人を失った人たちに、何が役立ち、何が役立たないのかを理解し、その人たちの求めに応じて、慎重に、思いやりをもって適切に対応することが大切です。
また、死別や大切なものを失うと、悲しみや不信、絶望、否定、怒り、罪責感といったさまざまな感情が生じ、それらは大きな苦痛を伴います。行動面でも、感情が失われたかのように無表情になったり、何事もなかったように振る舞ったり、ひどく感情的になって泣き叫んだり、支援者に対して強い口調で怒ったりすることがあるかもしれません。
これらのことは、過酷な状況下で人々がとる一般的な変化(反応)であり、支援する人には、このような災害後の反応を理解し、難しい感情や行動に対しても、受け入れる心の広さが必要です。