災害による3つの体験


心のケアの専門家の方へ

災害時の人々の心理反応の多くは「異常な状況下における正常な反応」であると捉えることが大切です。そのため、心理的問題を治療する・修正するというよりも、正確な情報を伝え、その状況への適応力や回復力を高め、人々がその状況に自分で対処していけるように支えていく支援が重要となります。ただし、中には精神保健上の問題が深刻になり、専門家が関わったり、治療が必要だったりする場合があります。

 

災害による心理反応は、以下の3つの体験に起因します。

1.喪失体験

大切な人やものを失うという「喪失体験」に起因するものです。災害時の悲嘆反応は、長期化したり、複雑化したりする危険性があります(=複雑性悲嘆)。またグリーフ(悲嘆)は、うつ病や不安障害、心身症、実際の身体疾患を合併しやすいことが知られています。

 

2.外傷体験(トラウマ)

「外傷体験(トラウマ)」に起因するものです。外傷体験は、自分あるいは自分の親しい人たちが生命の脅威にさらされ、強い恐怖、無力感、戦慄を感じることによって生じます。トラウマ反応が長期化すると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や抑うつ、アルコール依存などを引き起こし、治療が必要な場合があります。

 

3.二次的に発生するストレス

災害後に二次的に発生するストレスに起因するものです。被災者は災害により、家や家財の喪失、失職などによる環境の変化や、避難所生活を余儀なくされるために、多くの二次的なストレスが生じます。これらの生活上のストレスは精神的な負担をもたらし、場合によってはうつ病や心身症、不安障害を引き起こす要因となる場合があります。

 

したがって、災害後のメンタルヘルスの問題は、PTSDばかりに着目するのではなく、複雑性悲嘆やうつ病、心身症、アルコール依存などにつながる危険性にも、留意しておく必要があります。