災害中・長期の遺族支援


心のケアの専門家の方へ

災害による死別が他の死別と異なる点は、災害の場合、住居や家財道具の被害や喪失、経済的損失、コミュニティの崩壊など、他にも多くの喪失体験が重なる可能性があることです。

避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされるなど、生活の基盤を喪ってしまった場合、じっくりと亡き人のグリーフワーク(喪の作業)に取り組むことなく、生活再建に追われてしまい、ずいぶん年月がたってから、死別の喪失感を実感するということも珍しくはありません。

中長期の遺族支援のポイントとして、以下のことを留意して下さい。

 

〇安全の確立

災害による死別は「トラウマ」も伴っていることが多く、たとえ「心のケアの専門家」であっても、相手との信頼関係など「安全が確立した状況」でなければ容易に心の内を語ることは難しいでしょう。そのため、専門家の所に自分から訪れることは少ないですし、訪れたとしても、災害からずいぶん年月が経ってからになる可能性もあります。

 

〇抑圧した悲嘆

悲嘆が通常のプロセスをたどらず、身体症状として表現されるなど、抑圧された形で現れることもあります。もし身体症状を中心に訴えられる方がいた場合、不用意に心の奥底を聞き出そうとすることなく、遺族のニーズに寄り添うことが大切です。

 

〇記念日反応

重大なことが起こった日の前後に心が大きく揺さぶられることを記念日反応といいます。死別においても「記念日反応」はつきものですが、災害の場合、マスメディアを通じて、社会的にも記念日がクローズアップされやすくなります。回復に向かっている他の被災者と比較されるなど、二次的に傷つけられるリスクも上がる場合があります。