災害後に起こる心の問題


大切な人をなくされた方へ

災害は、人々の心に「トラウマ」と「喪失」という2つの問題を、同時に引き起こします。「トラウマ」の問題は、地震の恐怖や、また起こるのではないかといった不安など、受け入れ難い出来事の衝撃からくるものです。

一方、「喪失」の問題は、家族や家、仕事、家財、住み慣れた町並みや近隣の人々など、自分にとってかけがえのない大切な人やものを失った悲しみからくるものです。

 

以下では、災害で大切な人を失った方に起こる心の問題をまとめてみました。

 

【災害後の感情】

  • 引き起こされる感情は、圧倒されるほど脅威的なものに感じられるかもしれません。自分が生きていることに対しても、強い罪悪感を持つことがあるかもしれません。また、自分でそれをコントロールできず、気がおかしくなったのではないか思うことさえあるかもしれません。
  • その時の光景が頭から離れなかったり、何度も繰り返し心によみがえったり(フラッシュバック)、悪夢を見ることもあります。そのたびに恐くなったり、悲しくなったりするかもしれません。
  • 何も感じない、現実感がない、涙も出ない、というような無感覚な状態になることもあります。時には思考がしっかり働かなかったり、混乱したりすることもあります。これは、つらさや恐怖から自分自身を守るために、無意識的にそうなるのです。
  • 反対に、普段なら何でもないことに過剰に泣いたり、不満や怒りが抑えきれず、爆発することもあります。また怒りが自分に向いて、その人を守れなかった自分を許せなかったり、もっと~していれば良かったといった強い後悔や罪責感を生じたりすることもあります。怒りや罪責感は理不尽な出来事が起こった時に生じるとても自然な反応です。

 

【その他のこと】

  • 極度の疲労感、不眠や食欲低下、頭痛や腹痛、血圧の上昇や心拍数の増加など、心に受けた痛手が、身体に大きな影響を及ぼすこともあります。
  • 家族や友人などの人間関係にも影響が出ます。お互いを結束させる機会になることもあれば、緊張状態を生み出し、支え合うことが難しくなる場合もあります。誰かに一緒にいてほしいと感じることもあれば、逆に一人でいたいと思うこともあります。

 

 

以上のことは、非常に苦痛を伴いますが、それらは喪失やトラウマ体験に対する正常な反応です。その人が弱いからでも、悪かったわけでもありません。

 

災害は、人の人生を脅かします。どのような状態になっても、全く不思議ではありません。あなたが弱いからコントロールできないのでも、何かあなたに責任があってこのようなことが起こったのでもありません。

 

「トラウマ」の問題も、「喪失」の問題も、人によってそれらが及ぼす影響や、それに対する対処方法はさまざまです。これが「正しい」反応の仕方、対処は「こうするべき」、というものはありません。すべての人にとって、悲しみも、悲しみ方も異なっています。

 

また、悲しみのプロセスには、時間が必要です。数ヶ月で気持ちが楽になる人もいれば、数年かかることもあるでしょう。人と比較せず、自分のペースで、少しずつ元気になっていくことが大切です。

 

しかし、いつまでも圧倒され、何ヶ月間も日常生活を送ることに支障が出る場合、あるいは何か気がかりな問題が解決できないまま続く場合、生きていても仕方がないと思う気持ちが何度もわきあがる場合には、心の専門家(精神科医・心療内科医・心理職など)や遺族の支援団体、支援機関、かかりつけ医などに相談してみましょう。