アウトリーチにおける注意点


心のケアの専門家の方へ

災害時の支援として、現場に出向いて被災者と面接したり、電話や書簡などにより被災者の現状やニーズを把握するといった「アウトリーチ」は、非常に重要な対応の1つです。

 

被災者自身がアクセスできる電話などのヘルプラインを災害早期に設置することも、アウトリーチに含まれます。2001年のNYのテロ後も、そのヘルプラインが被災者支援に大きな役割を果たしました。

 

個別的な関わりをもつ場合には、まず何の支援ができるかについて、具体的に自己紹介を行います。

(例)

「私は〇〇なのですが、何かお手伝いできることはありますか?」「私は〇〇なのですが、もし必要なことがあれば、いつでもお声かけ下さい。」

 

大切なことは、アウトリーチを担当する人たちの対応です。対応する人には、次のようなことが求められます。

1. 思いやりのある協力的な対応

2. 被災者の多様なニーズの理解

3. 一貫性のあるアドバイスと一般的な支援

4. その人の訴えを、必要に応じて適切な支援につなぐ技術

(電話を個別訪問につなぐ、ハイリスクの人を専門的治療につなぐ、など)

 

アウトリーチを適切に行うためには、事前に十分なトレーニングを受けておく必要があります。また、可能であれば、支援後にスーパービジョンを受けたり、支援者間でインフォーマルな形で互いの経験をシェアすることも、有用だといわれています。

 

家族や近親者が亡くなった被災者の支援には、遺族の喪失と悲嘆について理解し、また遺族が行わなければならない複雑な手続きについて、十分な専門的知識を有していることが必要です。また、遺族の支援者は、ひどく損傷した遺体の状態にも、ある程度慣れておく必要があります。

 

災害で近親者を亡くすことは、トラウマを引き起こすほどの大きなストレスです。そのような過酷な状況の被災者と関わることは容易ではありませんが、まずは被災者の優先度の高い要求に積極的に取り組むことで、支援の方向性が見えやすくなります。

 

特に家族が死亡している可能性を認める初期の段階では、「無表情」「何もなかったように振る舞う」「感情的に泣き叫ぶ」といった様々な行動が、出現することもあるでしょう。遺族のトラウマ反応と悲嘆反応の両者を理解し、被災者の回復力と病理性に対して、両者とも憶測せずに、適切に対応することが大切です。

 

 

*このページはBeverley Raphael博士に特別に提供頂いた “ Loss and grief; disaster deaths, their implication and management”の原稿を参考に作成しました。