遺族支援における注意点


心のケアの専門家の方へ

このウェブサイトの他のページでも触れていますが、災害時の遺族支援は、大変難しいと心得て下さい。

 

その理由の1つとして、喪失に適応する期間や方法は個人差が大きく、回復が早い人もいれば、長く問題をかかえる人もいます。問題の起こり方も多様で、ある人は何らかの活動で「過覚醒」状態で適応する人もいれば、悲嘆に「浸りきる」人もいます。

自分のやり方で少しずつ前に進むので、そっとしておいて欲しいと望む人もいれば、積極的に支援ネットワークや専門家の支援を望む人もいます。また、その人自身の問題というより、「家族関係」の問題や、コミュニティからの「孤立」による問題もあります。

 

しかし、どのような場合であれ、どのような時期であれ、遺族支援を行う支援者に一貫して求められる力は、「その人の過酷な体験を理解し、その人がもつニーズ・脆弱さ・強さに応じて、適切な支援を適合させること」です。災害時の遺族の悲嘆は、強い痛みを伴い、複雑で、長期にわたるため、この支援は長期間フォローアップされる必要があります。

 

以下は、特に災害時の遺族支援で考慮されるべき点を挙げてみました。

 

1. 死因の説明は、特に繊細さが必要です。ショックをできるだけ避ける配慮と、正しい情報提供が、のちの心理的回復に影響を与えます。そのため、特に警察との協力が必要な場合があります。

 

2. 多くの人が亡くなる災害では、行方不明の家族を探すために、その家族が多数の遺体を目撃することがあります。そのことは、トラウマを一層深刻にする危険性があるため、できる限り遺族が多数の遺体を目撃しないようにする配慮と、事後のサポートが重要となります。

 

3. 9.11のNYテロにおいて、タワーが墜落する画像が多くの人の心に影響を与えました。特にこのような大惨事のイメージが遺族の頭に焼きつくと、強烈なトラウマのために、喪失に向き合うことが困難になります。そのため、喪失について語ることはできるのは、長い年月が経過してからになることも少なくないということを、心にとめておく必要があります。

 

4. 故人が苦しんだかどうかについての質問は、遺族から頻繁に生じます。答えを出せないこともありますが、即死や即座に意識不明になったことが明らかな場合は、比較的、対処がしやすくなります。支援者は、共感的で現実的な対話をもち、安心できる場を提供することで、遺族自身が「物語」を語る中で、この問題に向き合うことを助けることができます。

 

5. 遺体が見つからない場合は、特にその家族の回復な困難となります。その場合の支援については、

「あいまいな喪失情報ウェブサイト http://al.jdgs.jp/  」をご参照下さい。

 

 

*このページはBeverley Raphael博士に特別に提供頂いた “ Loss and grief; disaster deaths, their implication and ,management”の原稿を参考に作成しました。