悲嘆への対処


悲嘆(グリーフ)とは

悲哀の過程は、通常、山あり谷ありで進行し、少し回復してきたように思っても、何かの誘因ですぐにまた深い悲しみに沈みこむことを繰り返します。しかし、再び悲しみがぶり返しても、前と全く同じ状態に戻るのではありません。少しずつ死の現実を理解し、大切な人がいない生活を認識し、故人との思い出を偲びながらも、新しい生活や役割、人間関係に目を向けているようになってきます。

 

悲嘆(グリーフ)への対処は、「悲しみに向き合う過程(喪失志向)」と「新しい生活に取り組む過程(回復志向)」の間を揺らぎながら、どちらかに偏り過ぎることなく、バランスよく交互を行き来できることが大切であると言われています (Stroebe 1999) 。

 

「悲しみに向き合う過程(喪失志向)」では、悲しみや心の痛みを感じながら、自分なりの喪の作業*を行います。一方の「新しい生活に取り組む過程(回復志向)」では、現実の生活に着目し、気晴らしをしながら、新しい役割や力を注げることを見つけていきます。

 

回復に要する時間は、死の状況や衝撃度、その人の資質や過去の経験などによって、非常に幅があります。数ヶ月で落ち着く人もいれば、何年もかかる人もおり、人それぞれです。ほかの人と比べず、自分のペースで少しずつ元気になっていくことが大切です。

 

*喪の作業:泣いたり、人に話をしたり、仏壇に手を合わせたりといった悲嘆過程の中で心に折り合いをつけていくための行為のこと

 

※Stroebe M, Schut H (1999) :The dual Process Model of coping with bereavement. Death Studies 23:197-224.