複雑性悲嘆とうつ病


悲嘆(グリーフ)とは

大切な人を亡くしたあとに、つらく悲しい気持ちが続くことは自然なことです。しかし、時にはそれが長い期間、激しく続き、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。もし死別後の悲しみが何ヶ月も変わらず、落ち着くどころか逆に苦痛が増していたり、新しい生活や人生に目を向けることができない場合は、「複雑性悲嘆」や「うつ病」といった、深刻な問題のサインである可能性も考えられます。

 

「複雑性悲嘆」は、大切な人を亡くした悲しみが激しいままの状態が続いていることをさします。大切な人の死を受け入れられなかったり、いつまでもその人のことが頭から離れず日常生活が混乱したり、人間関係に支障が出たり、その人のいない人生に意味が持てない、といった状況が見られます。その症状が、死別のつらさや亡くした人への思いや愛しさに、密接に関連していることが特徴です。

 

一方の「うつ病」は、抑うつ的な気分、意欲の低下、睡眠障害(早朝覚醒など)、食欲の低下、集中力の低下、希死念慮などが見られます。「うつ病」では、憂うつな気持ちや絶望感が続き、生活全般に対して悲観的になることが多いのに比べ、「複雑性悲嘆」では、愛する故人に関連した激しい苦痛や悲しみを伴った症状が表れます。

 

お薬は悲嘆(グリーフ)そのものを治すことはできませんが、うつ病の症状や不眠を改善することができます。複雑性悲嘆では、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの疾患が合併していることが多いといわれています。眠れない、気持ちの落ち込みが続く、苦しくて生活に支障が出ている、死にたい気持ちになる、などの症状で困られている方は、死別に詳しいメンタルへルスの専門家(精神科医や心療内科医、心理職など)に相談することが大切です。お薬やカウンセリングによって、症状を改善できる可能性があります。